杭基礎の基本と構造計算チェック〜杭基礎は、構造物の基礎

1 総論

杭基礎とは、軟弱な地盤や構造物の建設において、杭を打ち込み構造物を支える基礎です。
支持方式によって、支持杭と摩擦杭に分けられます。支持杭では先端を支持層に到達させ、
主として杭の先端に上向きに働く先端支持力によって荷重を支えます。
一方、摩擦杭では先端を支持層まで到達させず、尾本して杭の側面と地盤との間に働く周面摩擦力によって荷重を支えます。
摩擦杭は、支持層がかなり深い場合に採用されます。

2 杭の分類

(1)場所打ち杭工法

現場で組んだ円筒状の鉄筋を掘削した地盤の中に落とし込み、後からコンクリートを穴の中に流し込み、固めて杭を形成するものである。
地面を掘削する際の方法により工法が異なる。

@アースドリル工法

アースオーガをしようして掘削を行い、鉄筋を吊り入れ、コンクリートを打設して杭を作る。
孔壁の崩壊を防ぐため、ベントナイト液を用いる。

Aオールケーシング工法

オールケーシング(パイプ)を揺動装置により、反復回転させながら、油圧ジャッキで地盤に圧入した後、
ケーシング内に落下させたハンマーグラブで中の土砂を掘削し、排出する。
支持層に達した後、鉄筋籠を入れ、ケーシングを抜きながら、コンクリートを打設し、杭を作る。

<施工杭径> 
800〜3000mm

<深さ限界> 
60m程度

<長所・欠点>
・掘削孔壁をケーシングチューブで保護するため、周辺に与える影響が少ない。
・汚水処理、地下水への環境対策に有利
・硬い土質でもアタッチメント変更で対応可能
・地下水位以下に粘着性のない厚い砂層があると、ケーシングが引き抜けない場合がある。

Bリバース工法

ドリルビットを回転させ地盤を掘削し、孔内水とともに土砂をエアリフト方式を用いドリルパイプより地上に排出する。
その後、土砂を分離し水は再び孔へ循環させる。
孔壁の保護は、表層部ではケーシング(パイプ)を使用して、ケーシングより深い場所では、掘削泥水と地下水の水頭圧により保護する。

<施工杭径>
800〜3000mm

<深さ限界>
70m程度

<長所・短所>
・岩盤の掘削も可能
・砂質土が多い地盤でも施工可能
・低振動・低騒音
・泥水処理量が多い。
・ドリルパイプ径より大きい石(15cm以上)の掘削は困難

CBH工法

ボーリングマシンを使用し、ボーリングロッドの先端に取り付けたビットを回転させ、ノーケーシングで掘削する工法。
掘削には、安定液を使用し、これをビット先端にポンプで送り込み、掘削された土砂を上昇水流で孔口に運び排出する。
掘削後に鉄筋籠を挿入し、コンクリートを打設し、杭を形成する。

<施工杭径>
200〜1500mm

<深さ限界>
50m程度

<長所・短所>
・あらゆる地盤で施工可能
・多種類の杭施工が可能(鋼管杭、場所打杭等)
・狭い場所で施工可能
・騒音・振動少ない
・鉛直制度が低い
・引き抜き、載荷限界重が他の工法に比べ小さい。
・直径3cm以上のれきは回収できない。

D深礎工法

(2)既設杭工法

@圧入工法

A打撃工法

Bプレボーリング工法

C中堀工法

D回転工法

工法と杭の種類により、施工可能長さが異なる。
主として、杭打ち機にアースオーガをセットして施工する。

杭の工法による分類
レベル1 工法別 詳細 内容
杭工法 既製杭工法 打込み杭工法 打撃工法
バイブロハンマ工法
埋込み杭工法 中堀り杭工法
プレボーリング杭工法
鋼管ソイルセメント杭工法
回転杭工法
場所打ち杭工法 機械掘削工法 オールケーシング工法
リバース工法
アースドリル工法
BH工法
深礎工法 深礎工法

杭の材質と形状による分類です。
杭には、様々な種類があります。

杭の材質と形状による分類
レベル1 工法別 詳細 内容
鋼杭 鋼管杭
H形鋼杭
コンクリート杭 既製杭 RC杭
場所打ち杭 PHC杭
合成杭 鋼管ソイルセメント杭
SC杭

3 荷重の組み合わせ

<橋台の杭基礎を設計する場合>

@死荷重+活荷重+土圧

A死荷重+土圧

B死荷重+土圧+地震の影響

ただし、水圧、浮力または揚圧力が作用する場合はその影響を考慮しなければならない。

<橋脚の杭基礎を設計する場合>

@死荷重+活荷重

A死荷重+温度変化の影響

B死荷重+活荷重+温度変化の影響

C死荷重+地震の影響

D死荷重+風荷重

ただし、流水圧、衝突荷重などを考慮する場合は活荷重を考慮しない場所についても検討しなければらない。
また土圧、浮力あるいは揚圧力が作用する場合にも、その影響を考慮しなけばならない。

4 杭の重要事項

○場所打ち杭のコンクリート

単位セメント量:350kg/m3以上

水セメント比:55%以下

スランプ:15〜21cm(18〜21cm)

コンクリートの呼び強度:30N/mm2以上(設計基準強度24N/mm2)*よく間違えるので要注意

水中で施工する場所打ち杭のコンクリートの許容応力度(N/mm2)
コンクリート呼び強度 30 36 40
水中コンクリート設計基準強度 24 27 30
圧縮応力度 曲げ圧縮応力度 10
軸圧縮応力度 6.5 7.5 8.5
せん断応力度 コンクリートのみでせん断力を負担する場合 0.23 0.24 0.25
斜引張鉄筋と協同して負担する場合 1.7 1.8 1.9
付着応力度(異形鉄筋) 1.2 1.3 1.4

鉄筋の許容応力度の一覧です。

鉄筋の許容応力度(N/mm2)
応力度 部材の種類 鉄筋の種類 SD295A、B SD345
引張応力度 荷重の組合せに衝突荷重あるいは
地震の影響を含まない場合
一般の部材 180 180
水中あるいは地下水位以下に設ける部材 160 160
荷重の組み合わせに衝突荷重あるいは地震の影響を含む場合の許容応力度の基本値 180 200
鉄筋の重ね継手長あるいは定着長を算出する場合 180 200
圧縮応力度 180 200

○設計径

工法 設計径
オールケーシング工法
リバース工法
アースドリル工法
0.8m以上とし、0.1m段階とする。
ただし、アースドリル工法において安定液を使用する場合には、
設計径は公称径から0.05m減じた値とする。
*よく間違えるので要注意
深礎工法 1.4m以上とし、0.1m単位とする。

○鉄筋の最小かぶり

オールケーシング工法、リバース工法、アースドリル工法:120mm

深礎工法:70mm

○杭の配列

D:直径 杭は中心で計測

○杭から外側まで

打込み杭、中堀り杭、プレボーリング杭:1.25D

場所打ち杭、鋼管ソイルセメント杭:D

○杭から杭

2.5D以上

5 杭の構造計算

設計で考慮する荷重 考慮すべき荷重の例 杭基礎の限界状態
常時・暴風時 死荷重、活荷重、土圧、温度変化、風荷重、地盤変動 ○杭頭反力≦許容支持力
○発生水平変位≦許容水平変位
○発生応力度≦許容応力度
レベル1地震時 死荷重、土圧、地盤変動
レベル2地震時 死荷重、土圧、地震の影響 ○基礎が系としての降伏に達しない
○杭本体のせん断力≦せん断耐力
○フーチングの発生断面力≦耐力
(曲げモーメントについては降伏モーメント
、せん断力についてはせん断耐力)

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